ニュースリリース

2019年6月24日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

フリーア美術館が所蔵する文化財の高精細複製品を墨田区へ寄贈
「玉川六景図」「波濤図」など葛飾北斎の肉筆画13点を制作

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第12期作品として、本日、米国の国立スミソニアン協会フリーア美術館(以下 フリーア美術館)所蔵の「玉川六景図」「波濤図」など葛飾北斎の肉筆画13点の高精細複製品を墨田区へ寄贈し、明日より、すみだ北斎美術館にて公開します。

玉川六景図

玉川六景図

「玉川六景図」「波濤図」など葛飾北斎の肉筆画13点の高精細複製品を制作

「玉川六景図」は、葛飾北斎の肉筆画を配した六曲一双の屏風であり、玉川六景とは、古歌に詠まれた6カ所の玉川の総称です。現在、フリーア美術館に所蔵されている屏風の仕立てでは、右隻6面が人物、左隻6面が風景となっていますが、もともとは人物と風景を一対として構成されていた可能性が高く、今回の制作に際しては、新たに発見された写真資料やこれに関する論文に基づいて、元来の配列で再現しています。
「波濤図」は、北斎の代表作「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を彷彿(ほうふつ)とさせるかぎ爪状の波濤が岩に押し寄せる作品です。
今回制作した肉筆画13点の高精細複製品のうち7作品は、本プロジェクトのために開発した絹本(けんぽん)に出力しており(残り6作品は和紙に出力)、色だけでなく絹本の質感をも、原本に倣って忠実に複製しています。
現在、作品の原本は全て、米国のフリーア美術館に所蔵されています。実業家チャールズ・ラング・フリーアが設立したフリーア美術館は、彼の遺志を継ぎ、全ての所蔵品の持ち出しを禁じており、現地を訪問しない限り、鑑賞することができません。同館が所蔵する日本美術1万2,700点の中から、葛飾北斎の肉筆画13点を選び、それらの高精細複製品を北斎ゆかりの地である墨田区に寄贈することで、日本絵画の名品の“里帰り”が実現します。

波濤図

波濤図

寄贈作品をすみだ北斎美術館で公開

作品は、2019年6月25日より8月25日まで、すみだ北斎美術館で開催される「綴プロジェクト 高精細複製画で綴る スミソニアン協会フリーア美術館の北斎展」で展示されます。なお、本展示は、「日本博」主催・共催型企画のひとつであり、地域の美術館によるものとしては第一弾となります。

第12期作品(13点)

作品名 員数 作者名 時代 寄贈先
玉川六景図 六曲一双 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
鍋冠祭図 二曲一双 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
富士田園景図 六曲一双 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
十二ケ月花鳥図 六曲一双 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
雷神図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
年始回りの遊女図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
遊女図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
波濤図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
源氏物語・早蕨図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
新年風俗図 双幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
漁樵問答図 双幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
蟹尽し図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区
琵琶に白蛇図 一幅 葛飾北斎 江戸時代 墨田区

【「綴プロジェクト」とは】

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。2018年の第11期作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの機材を刷新し、これまで以上に高精細な複製品を実現しています。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、小・中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。今回制作した作品を含め、現在までに全51作品を寄贈しました。

  • 第11期作品より、制作で使用したカメラは「EOS 5D Mark IV」、レンズは「EF400mm F2.8L IS II USM」。第12期作品より、大判プリンターも「imagePROGRAF PRO-4000」に変更。

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。

【「日本博」とは】

「日本博」は、文化庁および独立行政法人日本芸術文化振興会を中心に、関係府省庁や文化施設、地方自治体、民間団体等の総力を結集した大型国家プロジェクトです。 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機に、「縄文から現代」までの「日本の美」を体現する美術展・舞台芸術公演・文化芸術祭などを、「日本人と自然」という総合テーマの下、四季折々・年間を通じて全国で展開しています。
今回の「綴プロジェクト 高精細複製画で綴る スミソニアン協会フリーア美術館の北斎展」は、「日本博」主催・共催型企画のひとつであり、地域の美術館によるものとしては第一弾となります。

本ページに掲載された高精細複製品の画像のクレジットは以下のとおりです。

玉川六景図:
Facsimiles of works in the collection of the Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington DC:
Gift of Charles Lang Freer, F1904.204-205

波濤図:
Facsimiles of works in the collection of the Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington DC:
Gift of Charles Lang Freer, F1905.276

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